第4章 調査の成果
第6節 7号墓・72号墓・73号墓
(1)遺構(第31図・第32図、図版7・27)
7号墓・72号墓・73号墓の各遺構は、調査区の中でも比較的北側の一画の所在する遺構群で、調査 区が所在する丘陵の頂部近くの斜面を利用して構築された掘込墓である。前節及び前々節で述べた4~
6号墓および74号墓と密集して形成されており、墓庭の共有あるいは遺構同士の切り合いが観察され る。上記の3基の遺構は互いに切り合う遺構であることから、本節で一括して記載する。
7号墓は、3基の遺構の中でも最も上位のレベルで検出されており、墓室床面及び東と南側の壁面の 立ち上がり際が残存する状況を確認できた。しかし、72・73号墓の掘り込みに墓室の一部および入口 部分などが切り合うことから、その形状を検出することができなかった。そのため墓口方位は不明であ る。墓室の平面形も正確には不明であるが、残存部から想定すると、長方形の平面形に、棚を有さない 構造であったと考えられる。遺構覆土はニービを主体とすることから、崩落により埋没した可能性が高 い。また、73号墓との切りあう箇所において、堆積状況を観察したところ、7号墓に堆積する覆土を 掘り込む形で73号墓が形成されている様子を窺うことができた。そのことから、7号墓埋没後に73号 墓が構築されたものと判断される。
7号墓からはボージャー形の蔵骨器の身が1点及び金属製の簪1点が床面直上より出土している。蔵 骨器は床面直上に直立していることから原位置を保っているものと思われ、マドは西方向を向いている ことから、墓室入口が西側に向いている可能性が窺われる。また、床面上からは石灰岩礫も2点検出さ れており、一次葬に用いた台石の可能性が考えられる。蔵骨器の形態により隣接する6号墓と比較する と、相対的に古い時期に使用されたものと思われるが、具体的な時期を窺うことは困難である。
72号墓は上記3基のうちではもっとも下のレベルで床面が検出されており、周辺の5号墓あるいは 6号墓などと同一のレベルである。墓室から墓庭までが検出されており、墓口方位は西(N81°W)
を向く。墓室形状は概ね正方形で棚は造られていない。墓室右壁は残存しておらず、左壁は7号墓と接 しており、天井近くが7号墓の墓室と切りあっていたものとみられるが、先後関係は確認できなかっ た。墓室内に蔵骨器などは残存しておらず、また、遺構は地山崩落によるものとみられるニービで充満 していたことから、移転等の後に埋没したのではないかと想定される。そのため、造営・使用に関する 時期は不詳である。また、墓室入り口付近に石灰岩礫が4点並んでいる状態で検出されたが、その性格 についても不明である。
73号墓は前述のとおり、7号墓よりも新しい時期に形成された遺構であると考えられるが、遺物な どの出土はほとんど見られず、遺構形状も明瞭ではないことから、詳細は不明である。
(2)遺物(第33図、図版39)
上記の各遺構に伴う出土遺物の種類と数量の内訳は第3表のとおりである。また、蔵骨器の観察表に ついては章末に一括して記載しているため参照いただきたい。
7号墓からは、ボージャー形蔵骨器1点と金属製の簪の各1点が出土した。これらについて図を示す とともに以下に記載する。
蔵骨器1(第33図1)は、ボージャー形の蔵骨器の身である。口縁部は内傾し、口唇部は玉縁状に 肥厚する。器面は全体的に滑らかに調整されるが、一部に調整痕を残すほか、小泡状に焼き膨れと思わ れる変形が胴部に見られる。マド枠は唐破風形の貼り付けで比較的厚みをもって形作られ、胴部は無文
7号墓
6号墓
22号墓 7号墓
72号墓 73号墓
72号墓
6号墓 73号墓
72号墓
EL=106.00
EL=105.00
EL=104.00EL=104.00 EL=105.00 EL=106.00 AA'
A' A
EL=106.00
EL=105.00
EL=104.00 EL=104.00
EL=105.00 EL=106.00
B
B
B'
B' EL=106.00
EL=105.00
EL=104.00 EL=104.00
EL=105.00 EL=106.00
B
B'
7号墓
73号墓
7号墓
6号墓 73号墓
6号墓 7号墓
73号墓 簪
①
簪
①
X:26130.000 Y:22353.000
Y:22353.000
X:26133.000 Y:22355.000
X:26133.000
Y:22355.000
第31図 7号墓遺物出土状況平面図・立面図
第32図 7号墓・72号墓・73号墓遺構平面図・断面図
である。頸部の横帯は2、3条の凹線であることから、安里分類(2006)によるⅢ式ないしⅤ式に分 類されるものと考えられる。
第33図2は金属製の簪である。頭部先端及び竿部の先端がやや欠けるが、匙状の形態である点及び 残存長で16㎝を測ることから、女性用の本簪であると判断される。首部・竿部ともに断面形は六角形 で、直径は2.9㎜を測り、全体が青錆で覆われることから銅製であると考えられる。
第13表 7号墓出土簪観察表
(3)銘書
7号墓から出土した蔵骨器の蓋には銘書が書かれているものが見られたが、上記の身とのセット関係 は把握できなかったことから図化は省略した。内容については第5章を参照いただきたい。
(4)人骨
蔵骨器内には人骨の出土が確認された。残存状態はそれほど良くないものの、同定・観察を行うこと ができる部位が認められたため、第6章において詳述している。
図版番号 出土地点 種別 材質
計測値(㎝ / g)
頭部
首部 ムディ部 竿部
重量 備考第 33 図 2
図版 39-5 墓室 本簪 金属製 0.9 3.6 ― (11.4) 9.1
匙状
( )は残存長
第33図 7号墓出土遺物
蔵骨器1 1
2